小学校の田植え体験 2011年6月7日

井上さんは地元の志賀小学校の田植え体験をボランティアでされています。

農業をもっと身近に感じてほしい、子供たちが将来農業に進む道のきっかけになってほしいとの願いをこめて指導にあたられています。

寒い日が続き、順延になっていた田植え体験も、ようやく暖かい気候になり実行する日が来ました。

寒くて冷たい田んぼで嫌な思い出にならないよう、暖かい晴れた日にすることにしたのは井上さんの優しい配慮です。

生徒数の少ない学校ですが、子どもたちは明るくて素直ないい子ばかりで、井上さんも子供も笑顔でとても楽しそうです。

 

挨拶と非常に簡単な説明の後、みな思い思いに苗を手に取ります。

いよいよ田植えの始まりです。

各自苗を手に田んぼへ素足ではいるのですが、「足が気持ち悪い~」「ヒルがぁぁ~」などと言いながらも楽しそうに大騒ぎで、見ていて本当に良いなって思いました。

子どもたちが素足なんだからと、井上さんも素足で田んぼに入ります。

等間隔に植えるための紐を持つのも小学生です。

紐の目印に合わせて、苗を植えていきます。

なかなか機械のように正確にはいきませんが、みんな一生懸命です。

2反ほどある田んぼですが、何やかや言いながらどんどん苗が植わっていきます。

「苗が無くなったぁ~」と言う生徒のもとへ苗を運ぶのは先生の役、休む間もありません。

田んぼも残り5分の1になったころ、空中田植えなる荒業が始まります。

苗を空に向かって投げて植えるんですよ。

みんなこの瞬間を楽しみにここまで真面目に田植えをしていたんです。

てんでバラバラに苗は植わってしまいますが、これでもちゃんと根付くんだそうです。

でもみんな本当に楽しそう。

田植えも終わり、用水路へ足を洗いに行くのですが、足だけじゃなくてそこらじゅう泥だらけです(笑

一仕事終えた子どもたちは本当に満足そうで、とてもいい顔をしていました。

その笑顔を見送る井上さんもまた、とても満足そうな笑顔で、こういうのって本当に良いなぁって思います。

 

このようにして植えられたこの田んぼのお米は、秋に収穫されると1年分の給食のご飯になるそうなんです。

自分たちで植えたお米で自分たちの給食になるって素晴らしいことだって思いませんか?

こういうのが生きた教育なんだなって思います。

ドロオイムシ 2011年6月25日

「いい満、こっち来て見てみ」

井上さんが稲を見て僕をよびます。

 

小さな虫が葉の上にいます。

何と言うことないような虫ですが、これは稲の害虫なんです。

その名もドロオイムシ。

その名を聞いて、この虫の名の由来はいまいちわかりませんでした。

これは成虫なのですが、もちろん見ての通り泥なんて背負っていません。

調べると、ドロオイムシは幼虫の時に、自分の出した糞を背中にくっつけて泥に見えるようカモフラージュしているのだとか。

稲の葉を食べて育つようで、食害にあった稲はこのようになってしまいます。

稲の葉に斑が入ったようになっています。

これがドロオイムシの食害にあった部分。

当然稲の生長に多少なりとも影響は出ます。

でも井上さんはあえて殺虫剤を撒いたりはしません。

 

「この虫が出るのは一過性のもの、いちいち目くじらを立てて駆除しなくてもそのうち居なくなって稲は回復する」

とのこと。

それより、殺虫剤を撒くことで残留してしまうほうが、お米のためにならないと、おおらかに見過ごされます。

 

低農薬でお米を育てるのは、お客様に安心して食べていただくことがどれだけ大切な事かをかんがえてのこと。

収穫のときに良いお米ができることのほうが、虫を退治する事よりも大切な事なんです。

 

そしてこのように害虫にも寛大になる事ができるのは、それに備えて抵抗力の強い苗を作り植えているからこそ。

 

井上さんの田んぼで撒かれる薬品は、田植えの後に一度だけ除草剤を使われるだけで後は何の農薬も使用しません。

それでも秋にはちゃんと育ち、お米は採れるんですよ。

 

よその農家さんは、どんな薬をどれだけ撒いているのかと思うと、ちょっと怖くなります。

虫を退治するために農薬を撒くとどのくらい収量が上がるのか知りませんが、少しでも多く取れたのそのお米はどんなご飯になるんでしょう?

田植え一ヵ月後の稲の生長 2011年7月11日

最後の田植えをした田んぼが1ヶ月経ちました。

稲の生長はと言うとこんな感じです。

ここのところの天候のせいなのか、少しよその田んぼと見比べるとやや見劣りするようではありますが、よその田んぼとは1ヶ月近く植えた時期が異なります。

僕は少々焦ってしまいましたが、井上さんはまったく動じる事はありません。

「もうすぐすると日照りが強くなるから、ちゃんと良い稲になるから心配ないよ」とのこと。

長年の稲作経験から、いろんな状態の稲の生長を見てきた井上さん。

今年の稲は順調とのこと。

天候の心配は無くは無いのですが、こればかりは焦っても心配してもどうしようもない事。

じっと稲の生長を信用して見守られています。

田植え約二ヵ月後の稲の生長 2011年8月2日

あれから約1ヶ月、随分たくましくなった稲達。

心配してたけど、やっぱり自然の力って素晴らしいです。

このところ畦に生える草を刈ることが僕の仕事です。

毎日暑くて嫌になる事もありますが、この日差しが稲の生長にはとても大事なんです。

綾部は日中は日差しがきつくても、夜には涼しくなります。

この夜の涼しさはおいしいお米に欠かせない要素なんだそうです。

もうすぐすると穂が出てきます。

水の管理 2011年8月3日

井上さんは田植え前からほとんど毎日田んぼの水の管理をされてます。

水の管理の仕方一つで草が田んぼに増えたり、稲の生長に影響したりと気が抜けない日々が続きます。

井上さんは17ヘクタールの田んぼの癖をすべて把握していて、どのたんぼの水が抜けやすいとかいった情報を元にこまめに管理されています。

今日は草刈の合間に用水池から水を田に入れる作業についていきました。

普段僕が気にしていなかった用水池にすごい仕組みを発見。

ただの階段だと思ってましたが、よく見るとなにやら鎖がついてるんですよ。

何だと思いますか?

実は取水口なんです。

鎖を引っ張ってふたを開けると、ここから下の田んぼに水を供給する水路につながっているんです。

何個もあるのは、ため池の水量に応じた所から取水できるシステムなんです。

これを考えた人ってすごいと思いませんか?

あっ、これを考えた人はさすがに井上さんではないそうです(笑

水路に出てきた水を行かなくていいところには板で蓋をして堰止めて水が必要な田んぼに入れる取水口を開けると田んぼに水が入ります。

田んぼの穴 2011年8月5日

スコップを片手に井上さんは田んぼの土手で何かを探しています。

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何だと思いますか?

田んぼの水漏れの場所を探してるんです。

水を入れてもすぐに抜けてしまう田んぼがあり、その水漏れの場所を井上さんは探してたのですが、それは田んぼの土手が滑っていたり水で浸食されていたりする場所から推測して探されます。

このような場所の上の畦を見ると、穴が開いていてそこから水が漏れてしまうんです。

小さな隙間から水は流れながらだんだん大きな穴に成長してしまいますが、これでは田んぼに水を入れても入れても意味がありません。

注意深く観察しながら、一つ一つ地道に穴を塞いでいかれるのですが、何しろ広大な農地です。

この作業もなかなか大変です。

水漏れする田んぼは特に気が抜けない田んぼなんです。

このようにしていつも田んぼの事を気にかけながら草刈や他の作業を平行してやっていかなくてはなりません。

このところずっと井上さんはほとんど休みなしです。

稲は分身する? 2011年8月7日

田植えのとき、稲の苗は3~5本ほどの束状で植えられます。

成長の過程で分けつと言う、株別れが起こります。

いわば分身の術。

この分けつという成長過程は、穂が出る前でなくては意味が無いそうで、穂が出るまでが分身のチャンスなんです。

穂が出た後に起こる分けつは、収量には関係せず無効分けつと呼ばれます。

 

定点観測のこの株は残念ながら分けつ数は少なそうです。

他の株ではかなり分けつしているものも多いのですが…

そっと見守りましょうかね。

稲の花 2011年8月13日

いつの間にか稲穂が出てきていました。

そして、よく見ないとわからないほど小さいですが、花が咲いています。

わかりますか?

小さな粒つぶしたのが稲の花なんです。

もうちょっと拡大すると判りやすいですね。

とても地味な花ですが、稲は風による交配なので、虫にアピールする必要が無いからなんです。

そろそろ稲刈りに向けて準備が始まります。

実ってきましたよ 2011年8月21日

田植えをしてから約2ヶ月、順調に実っています。

井上さんは、低農薬有機栽培でお米を育てています。

肥料については前に記事にしましたが、農薬についてはまだ触れていませんでしたね。

「できれば使いたくない」と言う思いですが、実は一回だけ田植えの直後に除草剤を使われています。

広大な農地を管理するためにやむなく撒かれますが、他の一般的な農法に比べるとはるかに農薬の使用回数は少ないんです。

一般的な米作りでは、除草剤のほかに殺虫剤も使われ、全部併せると農薬使用回数はどのぐらいになるんでしょうね?

 

「稲には稲の育つ力があるからそんなに薬を撒かなくてもちゃんと米は採れる」と井上さんは言われます。

こうやってちゃんと実っているのを見ると、なるほどなぁと実感できます。

常識的に米作りには指定された農薬が不可欠と思っておられる農家さんが意外と多く、なんだか考えてしまいます。

蜘蛛の花 2011年9月3日

稲の上にたくさんの蜘蛛の巣が張っています。

まるで花が咲いたようでとってもきれいだと思いませんか?

 

朝露で蜘蛛の巣が輝いています。

「これは農薬を使っていない証拠みたいなもんやで、こうやって蜘蛛がウンカなんかを食べてくれるんや、蜘蛛はありがたい存在で、薬を撒いたら蜘蛛もみんな殺してしまう」と井上さんは言われます。

殺虫剤を撒いてしまうと、害虫も減りますが益虫まで死んでしまい天敵が居なくなってしまいます。

たいてい益虫よりも害虫のほうが数が多く繁殖力も高いので、生き残った害虫は次に増えるときには莫大な数になってしまいます。天敵の無い状態だとどうなるでしょう?

安易に薬を撒く事がどれだけ未来の農業を苦しいものにするかを井上さんは知っておられます。

蜘蛛だけでなく、一見田んぼには必要が無いような生き物や微生物でも健康な農地であるためには欠かせない存在なんだと思います。

農薬はその全てを殺してしまうんですね。

生物の多様性が失われた農地は、さらに薬漬けの農法でなければ継続が難しくなるのではないでしょうか?

そこで採れる「収量が多く色つやの良い虫のつかないお米」は、安心して食べられるお米だと思いますか?

いよいよ稲刈りです 2011年9月6日

田植えから約3ヶ月、稲穂も色づきいよいよ稲刈りの開始です。

待ちに待った瞬間ですが、ここから一気に忙しくなります。

井上さんの表情がいつもと違ってきました。

仕事する男の顔です。

5条刈りと呼ばれるこのコンバインは、一度に5本のラインが刈り取れるんです。

よく乾いた田んぼなら、ものすごい勢いで刈り取りが進んでいきます。

 

実はこの機械は、もう17年も使われているものです。

農機具のメンテの方とお話していたところ、「井上さんぐらいの規模で、このように17年も同じ機械で使い続けるのは非常に珍しく、それだけ愛着があるんでしょうねぇ」とのこと。さらに聞くと、機械のメンテ代だけでも累積するともう1台同じ機械が買えるほどだそうです。

そのぐらい大切に機械を使われています。

感動しました。

刈り取りが進みコンバインのタンクがいっぱいになると、軽トラの荷台に乗せたグレンコンテナに移します。

この後、モミは工場の乾燥機まで運ばれます。

ずらりと並んだ乾燥機は、1日でほとんどの機械がいっぱいになります。

 

この後、乾燥機で水分が14%程度になるように乾燥されます。

田んぼの稲が刈り終わるまで延々とこの作業が続きます。

籾摺り 2011年9月12日

乾燥機で水分が14%ほどになるまで乾燥されたら、次はお米についているモミガラをとる工程です。

籾摺り機と呼ばれる機械にお米を入れます。

この写真の左側の機械が籾摺り機です。

籾摺り機でもみを取った玄米は次の機械、米選機に入り屑米がより分けられます。

その後石抜き機を通り右端のホッパーへ送られます。

 

籾摺り機の中のローラーでもみをはがされた玄米は機械の中の揺さぶられる台の上でまだ籾のついているものと選別され、籾のついているものはローラーのほうへ戻る仕組みになっています。

ゆするだけで選別できる事を最初に発見した人って凄いです。

きれいに選別された玄米は次のラインへ流れていきます。

 

屑米を機械で取り除くと袋詰めの作業です。

秤と連動してシャッターを開け閉めする機械でお米は自動的に量られます。

いちいち手で量っていたら大変ですが、この機械があるととっても楽です。

袋の口を閉めてフォークリフトで運べるようにパレットに積み上げます。

ただ積み上げるのではなく崩れないように積み上げるにはコツがいるんですよ。

しかも米袋ひとつは30kgです。

これを何袋も続けるんですが結構ハードな作業です。

一つ一つの積み重ねがこんな風になります。

凄い数でしょ?

これでもまだ全体の半分以下です(笑)